英単語研究:『能力』
英単語研究:『能力』
こんにちは!今週の「英単語研究」の時間です。今週末は長崎で研修のはずでしたが、延期となり自宅で大人しく英単語研究をしている週末です。そしてついに新著『ビジュアルで覚えるIELTS基本英単語』の見本が自宅に届きました!本を手に取るこの瞬間が人生で最も幸せな瞬間かもしれません。貴重な10冊のうち3冊を「英単語研究」を購読して頂いている方々にプレゼントします。応募方法は編集後記で詳しく書きますので是非ご応募ください。1月26日(火)の出版記念講演会は定員100名の申込みを超えましたので200名に増やして再度募集しています。そんなわけで今週も気合をいれて生活していきます。
それでは本題に入ります。大学院に在籍しているときロンドン大学の心理言語学(psycholinguistics)の授業でChild Language Developmentの権威であるProfessor Maggie Snowlingの特別講義を受けました。タイトルはLanguage and literacy development in children at high-risk of dyslexia、この講義で幼少期の言語発達障害という考え方が一変しました。彼女のBritish Academyでの講演動画も必見です!これまで失読症(dyslexia)と聞くと一般的に正常か異常かという議論がありましたが、実は人間は全員ある一定の言語障害(language disability)を持っているというのです。遺伝的要因が大きいですが、一般的には10%の子供に言語障害があると言われています。人間は皆、読むのが得意、書くのが得意というそれぞれの言語特殊性を持って生まれてくるわけです。子どもの記憶力も外見も体型も親の遺伝子が強く影響しているのです。その特殊性を障害という枠組みで評価してしまうことで社会でも同様の評価を受けてしまい生きづらくなってしまうわけですが、別の味方をすると才能と捉えることもできるわけです。ちなみに僕が監修している英語学習プログラムLinguaHackersの今月のテーマは「能力(ability)」で、リーディング教材のテーマが「失読症(dyslexia)」でしたのでこれについて書くことにしました。
対照的に生まれつき高い言語適性(language aptitude)がある人もいます。1959年にCarroll and SaponはModern Language Aptitude Test (MLAT) を開発し、記憶力は勿論、言語分析能力、音声分析能力などを測る適性研究が行われてきました。僕の指導経験からしても同じ年に同じタイミングで英語を始めた20名程の小学生のスペル書き取り能力を比較したことがありますが、同じ時間、同じ内容を提供しても個人差が顕著に現れました。これほどまでに個人差があるのに、一方通行の授業では効果が低いのは当然だなと感じたのを覚えています。僕が毎週ゲストを招待して日英のバイリンガルでお届けしているLinguaLiveというライブ配信授業にゲスト出演してくれたロンドン大学の後輩は独学で8カ国語を身に付け、言語適性が高いことを証明するような幼少期の出来事を共有してもらいました。実を言うと僕はストーリーを理解できません。週刊ジャンプを買った経験もなく漫画などを最後まで読み切ったこともありません。幼少期から説明書や解説文は得意でしたが、物語になると登場人物の名前や関係性が全く理解できなくなります。人には個性があり適性があり、これを障害と捉えるのは時代遅れだと思うわけです。普通じゃないという「普通」という言葉は傲慢だという哲学者もいます。自分の生まれ持った能力や適性を見極めて、好きなことを追求しながら適職を見つけていきましょう!
「能力」の英単語
最も一般的な能力を表すabilityはable(可能な)を土台に派生させると頭の中に整理できるかと思います。接尾辞としても機能するableにnotを表す接頭辞unをつけると叙述的用法の形容詞 でunable(できない)となります。動詞化接頭辞のenをつけるとenable(可能にする)となり、否定を表す接頭辞disをつけるとdisable(不能にする)となります。この関係性を理解した上でableの名詞形がability(能力)になり、再び否定を表す接頭辞disをつけるとdisability(障害)となります。ちなみに「障害」の同義語impairmentも覚えておきましょう。このようにableの語源イメージから派生させていく感じが語源を使った学習法の醍醐味です。学習で身につけた能力skill、度量の広さを表す適性能力はcapacityと言い、日本語でも能力の範囲を「キャパシティ」と言います。 「言語運用能力」は language competence や linguistic competence と表し、competenceは「求められている技能」と解釈できます。facultyは「生まれつき持っている能力」、commandはI have a command of French.「フランス語を操る能力がある。」のように「言語能力」を意味します。proficiencyは「熟達度」でMy proficiency in Chinese is intermediate.「私の中国語熟達度は 中級である。」のように使い、ケンブリッジ英語検定の最もレベルが高い級はC2 Proficiency(CPE)と呼ばれています。長くなりましたが、最後に日本語でもお馴染みのtalentを紹介します。ロンドン大学のあるパーティーで現役の大学生がステージでギター片手に歌を披露し、拍手喝采となり、僕は友達に感想を伝えようと思い浮かんだのが、She sings a song well.またはShe is a good singer.でした。その発言をする直前に友達がShe is talented.と一言。日本の教科書で覚えた英語表現しか思いつかない僕にとっては衝撃でした。talentedは「才能がある」という意味でtalent自体には「アートなどの特殊な分野での才能」という意味があるのです。日本のバラエティ番組に出ているタレントとはニュアンスが異なります。同じような表現で「天性の能力」という意味のgiftを使ってYou are gifted.「才能があるね」というように使うことができます。ピアノチャリティーのコンサートでこの表現をピアニストに褒め言葉として発している英国のジェントルマンを見たことがあります。
「能力」の英語表現
lack of ability to concentrate(集中力が欠ける)
assess a student’s ability(生徒の能力を評価する)
possess an exceptional ability(並外れた能力を持っている)
ability to foresee future technology(未来の科学技術を予知する能力)
The ability to communicate in English is important.
「英語でコミュニケーションを取るための能力は重要である。」
I am desperate to improve my English speaking ability.
「私は自分の英語のスピーキング力を向上するのに必死である。」
You take after your father in physical ability.
「君の身体能力はお父さんに似ていますね。」
The soil lost its ability to retain rainwater.
「その土地は雨水を保つ能力を失った。」
We master the ability to express and read emotion very early in life.
「我々は生まれて間もなく、感情を表現したり、読み取ったりする能力を身につける。」
I really feel that the ability to communicate in English is important.(同志社大学)
「英語でのコミュニケーション能力は大切であると非常に実感しています」
The success of a corporation lies in its ability to make effective use of its assets.(慶應義塾大学)
「企業の成功は資産を有効に使う能力にかかっている。」
People have a limited ability to foresee future technology.(早稲田大学)
「人間が将来の科学技術を予知する能力は限られている。」