英語教育

【永久保存版】おすすめの語彙習得理論書籍7選

自称英単語マニアの僕は学部も修士も語彙習得理論を中心に論文を書きました。そして高校時代から英単語帳を200冊以上集めて分析し、19歳のときに1冊目の英単語帳を出版しました。

今回はこれまで書いてきた語彙習得に関する課題と論文から引用しながらおすすめの語彙習得理論書籍7冊を紹介していきます。

まず1冊目はこちらのLearning Vocabulary in another Languageで最も深く長く愛用した1冊です。著者は語彙習得の世界的権威Paul Nationです。

Vocabulary is one of the most important parts of language as the basis of linguistic abilities. However, it has been underestimated and undervalued as the form of language was thought to be central to language learning (Zimmerman, 1996). これは2000年くらいまで語彙習得の論文で多用されるイントロで慣習に習って僕もunderestimated and undervaluedでGeneral Statementを始めました。

When considering the amount of vocabulary we use in our daily conversation, the number is innumerable and prodigious. Nation and Waring (1997) concluded that adults possess a vocabulary size of approximately 20,000 word families. Brants and Franz (2006) analyzed their corpus and counted 13.6 million word types in English vocabulary. While the quantity of words in English language is subject to change depending on the source, it can still be seen that most of the vocabularies might not be relevant to us. Earlier studies suggest that approximately 2,000 word families supply 99% of lexical coverage in spoken discourse, which means that 2,000 words are sufficient for a daily discourse (Schonell et al., 1956). However, a study by Adolphs & Schmitt (2003) revealed that 2,000 word families supply lexical coverage for less than 95% of spoken discourse, rather than the 99% in the previous study. Nation (1985) suggests that the vocabulary size of 3,000 words is enough for learners to read a general text without simplification. Teachers need to make sure that all these high frequency words are learned and spend a considerable amount of time ensuring this particularly for beginner students. The distinction between high frequency words and low frequency words is critical since teachers need to deal with these two different kinds of vocabulary in a different way (Nation, 2001). In a nutshell, the vocabulary for beginners should be limited to high frequency words such that students can formulate coherent messages.
教育を受けた成人の語彙レベルは15,000-20,000、10歳の子どもは8,000-9,000、習熟前の子どもは3,000-4,000というデータがあります。週に15-25語習得した場合、月に60-100語、年間500-1,000語、8年から16年で8,000語、ネイティブスピーカーの15,000語を身に付けるには15-30年かかるという計算になります。ではどのくらいの語彙数を身につければ良いのかというのが論点です。

次に紹介する書籍は語彙の学び方について最新の研究をまとめられたPaul Nationの最新版How Vocabulary is Learnedです。学会で聞いた中身の一部を以下にまとめています。

語彙学習というのは時間のかかる作業で教室外で積極的に自律学習していく必要があるということです。自律語彙学習において重要な4つの戦略はThe Matthe Effectと呼ばれ、①単語をパーツで覚える②コンテクストから推測する③辞書を効果的に使う④教室外で使用する、とされています。では語彙指導をするときにどのようなことを気をつけるべきなのか、初歩的な語彙習得理論から最新の研究結果までを紹介します。

1960年代に確立された理論で反義語や同義語を同時に提示すると学習者は習得するのが難しくなるというものがあります。

つまりHot(熱い)&Cold(冷たい)、West (西)East(東)、right(右)&left(左)などは場面を分けて遭遇したほうがいいということです。同義語も同様にadvanceやprogressやスペルも似ているadaptやadoptなどは別の場面で学ぶ必要があるということです。

最近の研究では形が似たものも習得が難しいということがわかっています。
例えばapple&orangeapple&bananaでは後者のほうが習得しやすいということがわかっています。これまでは似た単語同士をグルーピングして覚えやすくなると思われてきましたが、週の英語を学ぶときも別の場面で覚えたほうが効率がよいということがわかっています。

つまり中学1年生にも唐突に色や週、月のリストを提示するのではなく、自分の好きな色、自分の誕生日や家族の誕生日、好きな季節や月などのコンテクストの中でも遭遇を繰り返すアクティビティをした上で、それらのLexical sets(同じシチュエーション、文脈で使われそうな単語をまとめたもの)を提示して整理することで効率的に覚えることができます。

ストーリーをもたせて提示することが大切ということです。例外として以下のようなことが挙げられます。

Rabbits are fast and tortoises are slow.「うさぎは速くカメは遅い。」

Fastとslowという対義語が同時に提示されていますが、ストーリー性があることで学習負担は減るということもあります。
さらにアドバンストレベルの語彙習得理論でもWebbの最近の研究では、

① abhor, boulder, crave, sob ② lick, mourn, pawn, reef

①と②のどちらのほうが覚えやすいか?というリサーチクエスチョンで高頻出の同義語が存在する場合は関連付けて覚えるストラテジーがあるということがわかっています。語彙習得は個人のストーリーや印象で自分が覚えやすい方法を見出し、メタ認知戦略を利用して覚えやすくすることが大事ということです。

上記のような内容が書かれている同じくPaul NationのHow Vocabulary is Learnedがおすすめです。Paul Nationは語彙習得の世界的権威です。

次にPaul Nationが在籍するニュージーランドのVictoria University of Wellingtonを卒業された日本の語彙習得理論の権威、立教大学の中田達也先生の著書『英単語学習の科学』は神本です。第二言語習得研究(語彙習得理論)のあらゆる研究がわかりやすくまとめられていて、英語学習者にも大学の学部生にも超おすすめです。これを読んだ後にPaul Nationを読むとスムーズに内容が入ってくるはずです。

次にNorbert SchmittのVocabulary: Description, Acquisition and Pedagogyで20年以上前の書籍ですが、特に教授法の要素が豊富で、第一言語が与える第二言語語彙習得の影響などの研究もまとまっています。なぜか学部の時に購入していたので、この本の内容が今の土台になっています。

こちらも伝統的な本で、学部時代から本棚にいて、修論でもしっかり引きました。このタイトルでこの領域で最初に出版したことがすごいと思います。今ではSecond Language Vocabulary Acquisitionを専門という人はたくさんいます。

次に紹介する書籍、というか辞典は図書館閲覧用だったので所持していませんが、いつか欲しい本です。中田先生も登場しているのでその部分だけはコピーしてあります。

こちらの本は修士後に気になっていて購入した本ですが、僕の趣味にドンピシャで第一言語が語彙習得に与える影響で、博士に行ける時が来たらこの本の熟読から始めたいと意気込んでいます。言語差に興味がある方にはオススメです。