「英語を学ぶのは早ければ早いほうが良い」は間違っている?
「英語は早く始めたほうが良い」という言説は日本の保護者の中で常識になっています。これも自分が早期英語教育を受けてこなかったから英語ができないという思い込みです。
言語習得における適齢期についてはこれまで数多くの研究がなされてきましたが「Earlier is better(言語習得は早ければ早いほど良い)」というのは間違っているということは研究で既に明らかになっています。外国語として英語を学ぶ移民などにとっても「Later is faster(遅く始めたほうが早く習得できる)」ということは証明されています。認知能力や思考力が成熟してから外国語を体系的に学ぶ方が効率が良いということかもしれません。
また、日本人の先生から英語を教わった保護者が自分の子どもには「ネイティブスピーカーから英語を習ったほうが良い」と思っているということはよくありますが、これもまた思い込みだということがわかっています。
これまで言語を指導する時にはイマージョン教育(習得したい言語のみで教育を行うこと)が良しとされてきました。英語を英語だけで学ぶというコンセプトに惹かれ日本各地にイマージョン教育を売りにする学校が生まれました。さらに2008年の高等学校新学習指導要領では「英語の授業は英語で行うことを基本とする」ということが明示されてしまいました。しかし、その信仰とは反対に、今回のIATEFLではL1 use(第一言語使用)の有効性に関する研究発表が9つもあり、これまでの当たり前を覆されました。
Teaching is complex, and teaching a language is particularly complex, and there are no straightforward formula or recipes that will be effective in every context.
「教えるということは複雑で、言語を教えるというのは特に複雑であり、どのコンテクストにもあてはまる効果的な公式やレシピは存在しない。」
(Andon& Leung, 2014, p. 70)
最後にこの引用文を映し、知識というものは矛盾している部分もあれば潜在的に正確であることもあるが、個人によって結果は変わるということを認識しなければならない、と基調講演を締めくくりました。常に自分の当たり前を問い正し、Transform habitual practices!(習慣を変える!)という言葉を常に心がけていくことが大切だということです。